スポーツささえびと(Vol.69掲載)

スポーツを支える人にスポットを当てたインタビューコーナーです!

今回は、相模原市の4つのホームタウンチームが使用し、陸上競技大会や子どもの大会等の様々なイベントが開催される相模原ギオンスタジアムでグラウンドを管理する日本体育施設株式会社の関口将稔さんにお話を伺いました。

日本体育施設株式会社

関口 将稔さん

-自己紹介

静岡県静岡市出身の50歳。 

高校から大学の途中まで陸上競技の長距離をやっていました。大学卒業後は主にスポーツ用品の販売業に従事し、4年前に日本体育施設株式会社に入社。現在は相模原市在住。

-会社紹介

日本体育施設株式会社は1971年創立。スポーツ施設の設計、施工、維持管理を柱とし、芝生管理と公園管理なども行っています。

-日本体育施設に入社した経緯

40歳代で転職活動をする中で、たどり着いたのが日本体育施設です。未経験の職業でしたが、スポーツに関わりたいという思いで、決断しました。きっかけは、友人の「競技場で働けば」の一言でした。 入社してすぐ町田GIONスタジアムに配属されましたが、最初は、仕事内容がイメージしていたものと違う部分があり、悩むこともありました。

-グラウンドを管理する主な仕事

相模原ギオンスタジアムで芝生維持管理の現場責任者として、スタッフと作業を行いながら、作業スケジュールの作成や資材の管理など業務全般を担当しています。

日々の作業としては、散水・刈込・施肥・補修・ライン引きなどが主なものになります。また1ヶ月に1回程度、芝生に穴を開けたり、切れ込みを入れたりする更新作業というものを行っています。更新作業は、シーズンを通して芝生を良い状態に保ち、選手がプレーしやすいピッチにするための大切な作業です。 ギオンスタジアムでは、「ウィンターオーバーシーディング」という芝生の管理方法を採用しています。グラウンドのベースにある暖地型芝草(夏芝)は、冬になると休眠に入り、茶色く枯れてしまいます。そのため、秋に寒地型芝草(冬芝)の種をまき、生育させることで、年間を通して常緑を維持しています。春先からは、徐々に冬芝の密度を減らし、夏には夏芝のみに切り替わります。そして、また秋に冬芝の種をまくというサイクルで一年が進みます。私たちの仕事は、季節の移り変わりの中で、芝生の状態を的確に判断し、管理作業を行っていくことです。

-1日の仕事のスケジュール

出社して、まず芝生の状態を確認します。その後、当日の天気と週間天気を考慮して、当日の作業内容を決めます。おおよそ、前日に作業内容は決めていますが、芝の状態・天候・利用予定を踏まえ柔軟に対応するようにしています。作業に入る前に、他のスタッフたちと朝礼を行い、情報を共有します。ちなみに、相模原ギオンスタジアムの芝生管理は現在私を含め3名で行っています。毎日作業内容は変わりますので、試合前日の良くある作業パターンを紹介します。

・8:00~ 朝礼、作業の準備

・8:30~12:00 刈込、補修(同時進行)

・12:00~13:00 休憩

・13:00~16:00 ライン引き、補修(同時進行)

・16:00~17:00 片付け、終礼

大体、試合前日はこの作業を2~3名で行っています。作業は分担して行いますが、進み具合によってスタッフ同士協力して時間内に終わるようにしています。私たちの作業は、基本的に太陽が出ている間が勝負ですので、状況によって朝早くから始める場合もあります。芝刈り機・肥料散布機・トラクターなど機械を使う作業も色々とありますが、補修など地道な作業が意外と多いです。

-仕事のやりがい

プロの選手がプレーするグラウンドを管理していることにやりがいを感じるのはもちろんですが、一般の方や子供たちが全力でプレーしている姿を見たとき、このグラウンドを提供できて良かったと感じる瞬間があります。 芝生は生き物ですので、正直うまく行かないことも多いです。それでも、自分なりに考えて仲間と協力して試合当日まで、何とかして良くしようと努力して、試合当日を無事迎えられた時、やってきて良かったと感じます。後悔することもたくさんありますが、日々勉強だと思っています。利用者の方、施設の方、上司や作業スタッフ、色々な方たちの協力があって、今の芝生の状態があると思っています。そういった意味でも、その責任を背負って管理を行い、試合が行われることにより、一つの成果が目に見えるという点もこの仕事のやりがいのひとつだと感じています。

-芝生の管理者によって個性がでてくるのか

私たちは自社が今まで培ってきた技術・経験を先輩方から受け継ぎ、そこに自分のエッセンスを加えて管理を行っています。私の上にはチームリーダーがいて、そのチームでいくつかのグラウンドを管理していますが、ある程度基本的な部分は同じですから、やり方が大きく違うという事はありません。ただ、人によって感性やこだわる部分というのは違うと思いますし、何よりグラウンドによって環境が違います。また、顧客から求められるものが同じではないので、結果として違った芝生になると思います。ただ、管理する会社が違えば管理方法や方針が変わってくることはあると思います。

-仕事をする上で大事にしていること

とにかく芝生を見ることを意識しています。朝、昼、夕方、何回も見ます。何か変化はないか、緑度・葉の状態・土壌の水分など、天候や管理作業によって芝生がどのように反応しているのか見るためです。毎日発見があり、それを管理作業に反映していくことを繰り返しています。 また、一つ一つの作業の意味を考えるようにしています。私たちの作業は、天候や芝生の状態によって日々スケジュールの変更が求められます。もちろん先々をイメージして作業を行っていますが、今の状態で何がベストなのか、時にはベターな選択をすることもあります。なるべく、頭の中をシンプルにして目の前のことに集中して作業することを心掛けています。

-休みの日にすること

芝生を見に来ること。(笑)ついつい朝グラウンドを見に行ってしまいます。 休みの日唯一するのなら、最近あまりしていませんが、ジョギングをしたいです。今の仕事に就くまでは年に1回フルマラソンに参加していたのですが、最近は参加できていません。そのため、急激に走るための筋力と心肺機能が低下中です。それ以外では、サウナやスーパー銭湯に行くことが多いです。この仕事は腰にくるためマッサージ等のセルフケアをしています。

-この仕事で難しいこと

芝生は生き物であり、気象条件・土壌環境に大きく左右されます。その中で、私たちが関わり手を加えられる部分は限られています。いつどのタイミングで、何の作業をすべきなのか、それを考えて決断することが1番難しいと感じています。

-4つのプロリーグの試合前後に行う特別なことは

これはプロだからという訳ではありませんが、芝生が傷みやすい場所のケアには注意しています。基本的にスポーツによってプレーが集中する部分が違いますので、傷みやすい部分も違ってきます。また、局所的に損傷しやすい部分もあります。例えば、サッカーであればゴール前と副審走路、アメフトであれば選手が待機するエリア、ラグビーであればスクラムが多いエリアなど。あと、ウォーミングアップによる損傷も意外に油断できません。そのため、試合中はもちろん、どのようなウォーミングアップを行っているのかも欠かさず見ています。局所的な損傷に対しては、試合前に目砂をまいたり、回復を早めるために部分的に肥料をあげることもあります。損傷がひどい時は、公園内にある圃場の芝生を使って、直径10~20㎝程度の大きさで補植を行ったり、時には部分的な芝生の張替えを行うこともあります。

-4つのプロリーグで準備する違いは

サッカーはボールを転がすスポーツのため、ボールが走りやすい状態にするために刈高をやや短めにしたり、ボールがイレギュラーしないように平滑性も意識しています。 また、ラグビーとアメフトは、体の大きい選手がスクラムを組んだりして、芝生の上で踏ん張る動きが多いため、芝生の強度を上げることを意識しています。特に、ラグビーは芝生の生育が少ない冬に多く行われるため、秋の段階で強度のある芝生を作ることを意識しています。

-ラインをきれいに引く方法

ずばり、集中です。あまりにも目印のロープを凝視しすぎて、涙目になってしまうこともあります。スタジアムの芝生はあまり凹凸がありませんし、ラインカーは基本的に真っ直ぐ進みますので、誰でも慣れれば出来る作業だと思います。 ちなみに、最近ではGPSを使ったロボットのラインカーを使っているグラウンドもあり、驚きの速さでラインを引いてしまいます。

-趣味や最近ハマっていること

趣味というほどではありませんが、走ることは一生続けていきたいと思っています。あとは、仕事後の晩酌です。ビールを飲むことが生きがいです。ちなみに、ビールは年間で360日は飲んでいます。

-今後の目標、展望は

特別なことはありませんが、自分が任されたグラウンドを良くするため日々努力し、お客様に満足して頂けるような状態にすることが私の仕事だと思っています。そのためには、色々なことを日々勉強し、成功と失敗を繰り返しながら、自分の技術を向上させていくしかありません。時には、チャレンジする勇気も必要だと思っています。

-相模原という街の印象や住みやすさ

地元の静岡市に比べると道が混んでいることに驚きました。

人が多いところが得意ではないため、相模原市の都会すぎず自然が多い所が好きです。 また、ギオンスタジアムにあるクロスカントリーコースが本当にいいですね。仕事が休みの日でも朝走りに来るぐらい好きです。

-読者の方々へのメッセージ

ぜひ、ホームタウンチームの試合を観に来てください。その時に、芝生の状態も見ていただけたら嬉しいです。選手たちの足元を支えられるように、スタッフ全員で頑張っていきます。

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